東京・砧のシェアアパート「笑恵館」のオーナー・田名夢子さんは、1975年に建てられた木造アパート6室を貸し出すだけでなく、同じ敷地内の母屋や庭も地域に開放。アパートの住人である男性がパン店を開いたり、子育てのための集会を開催したりしている。昼時には多くの地域住民が開放された食堂スペースに集まり、笑い声が絶えない空間となっている。

シェアアパート「笑恵館」とオーナーの田名さん

オーナーから委託されて管理を行う団体の松村拓也さんによると、このアパートも以前はこのようなシェアアパートという形はとってはいなかった。その時の家賃は5万円。「時には4万円に値切られることもあったそうですよ」と話す。

2013年に耐震補強などのリフォームを開始。約500万円かかったが、間取りや内装は40年以上前に建てられた当時とほぼ変わっておらず、中にはほぼ同じ設備のままの部屋もあるという。年間家賃収入は約700万円。シェアアパートにする以前と比べ、収入は3倍近く増加した。

「大してリフォームをしたわけでもありませんが、今は家賃7万円でも誰一人文句は言いません。楽しい空間があれば、そこに住みたいなという人が増えて、その結果家賃収入も上がったんだと思いますよ」

「ここが好き」と言ってもらえるビジネス

共用スペースを地域に開放するためには、毎日誰かがこの場所にいる必要がある。松村さんは「オーナーと、私と、パン店の男性。この3名でだいたいシフトを組んでやっています。毎日カギを開けること。それが一番手間がかかります」と話す。

オーナーの田名さんは、毎日共用部の掃除を行っている。その傍ら、やって来たアパートの住人や地域の人たちと楽しく会話することが日常だ。

松村さんは「駅近で、新しいマンションはもちろん人気があると思います。しかし、逆に言えばさらに駅に近くて新しい家ができてしまえばそこに負けてしまうでしょう。でも、『どうしてもここが好きなんです』と言ってもらえるようなビジネスをやらなければ、長生きはできません」

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